エアーマット以上の効果が期待できるあたらしいマットレス
褥瘡の改善も見込まれるという研究結果が出ているマットレスです。
実際に使用してみた結果をレポートしています。
住友理工
SRアクティブマットレス「体圧ブンさん」 利用レポート
利用期間 平成30年12月10日 ~ 平成31年1月4日
対象者: N・I 89歳 男性 要介護4
病 歴: 脳内出血による右片麻痺・言語障害
高血圧・症候性てんかん
S状結腸狭窄・ストマ造設
■状況
平成30年2月 S状結腸狭窄のため、ストマ造設となる。認知症や言語障害があるため、入院中は思うようにリハビリが行なえず、ADLは低下。ベッドからの起き上がり、車イスへの移乗がほぼ全介助状態となり、要介護認定も介護3→介護4に変更された。
入院前は、起居動作、車イスへの移乗は見守りレベル、尿意を訴える事あるため日中はトイレ誘導を行っていた。夜間は入居前から吸収量の多い尿取りパットを使用し、夜間にパット交換を行っていたため、継続して対応していたが、退院後は終日オムツ使用の状態となる。
自力で寝返りをする事ができず、終日オムツ対応の状態であるため、皮膚トラブルが発生するリスクがあり、クッションなどを用いて定期的に体位変換をしなければならないのだが、身長170㎝ と大柄で、肘関節・膝関節に筋緊張と拘縮があるため、女性スタッフにとって、I氏の体位変換やオムツ交換といったケアは負担も大きくなっている。
また、夜間帯の排尿量がとても多く、吸収量の多い尿取りパットを使用したりする等しているが、痩せている事もあり、隙間から尿が漏れ出てしまう事が多い。体位変換をしなければならないが、角度をつけすぎると尿が漏れる可能性が高くなる。漏れた場合、筋緊張・関節拘縮のあるI氏を着替えさせるのも、また負担となる・・・。
試行錯誤しながら対応している現状があります。
■結果
今回、デモ利用した 住友理工 SRアクティブマットレス「体圧ブンさん」 は、
「体格や寝姿勢に応じて体圧を自動分散。床ずれ防止、介護の負担軽減に役立つ」とされています。実際に、九州大学病院で褥瘡の治癒が困難だった方が、従来のエアーマットから「体圧ブンさん」に切り替えて使用してみたところ、2~4週間程度で治癒(改善)が認められたというデータもあります。
実際にマットの上に寝てみると、30秒ほどで、何やらマットがモコモコと動き出します。これは、マットレス内の「スマートラバー(SR)センサ」が全身の体圧分布を計測。床ずれの発生リスクの高まる高圧部位を特定し、その部位のエアセルを膨張・収縮させ、体圧を分散してくれています。試しに体位を変えてみると、また30秒ほどした頃にエアセルが膨張・収縮します。数名のスタッフにマットレスに寝てもらいましたが、エアセル膨張・収縮する際、「違和感」があると感じる者もいました。個人差はあると思いますが、事前にお試し利用できると良いかと思います。(たとえ、寝たきり状態の人であっても、常に違和感や不快感を覚えながら寝ているのはNGだと思います。)
I氏には現在、褥瘡はありません。ですが、日中、車イスで過ごす時間が長く(臥床を促しても、拒否される事が多い)、臀部・仙骨部が赤みを帯びている事もあります。また、上記にあるように、自力での寝返りが困難で、筋緊張や拘縮のために女性スタッフには体位変換も負担が大きい。また、尿漏れのリスクも高いため、I氏に「体圧ブンさん」を使用し、皮膚状態の観察、体位変換の必要性、オムツからの尿漏れ頻度などを確認する事にしました。
まずは、違和感を覚えないかどうか・・ですが、臥床して頂き、確認しましたが、特に問題はないとの事でした。(その後も、訴えもなく夜間は良眠されていましたので、不快感はなかったものと思います。)
自動で体位変換されるエアーマットやベッドよりも、恐怖感や不快感は少ないのではないかと思います。
ベッド上での移動や体位変換については、通常、I氏は低反発マットレスを使用されています。マットレスの硬さを比較しても、さほど大きな変化はないように思われました。そのため、オムツ交換時に体位を変える際も、今まで通りに行うことができました。(エアーマットを使用すると、体位を変えにくい事もありますが・・)
車イスへの移乗時も、マットレスの両サイドがクッション素材であるため、沈み込んでしまうといったことがなく、「介助者が負担なく介助しやすい構造」になっていました。
皮膚状態については、それまで、やや赤みを帯びる事もありましたが、デモ利用中はそのような事もみられず、皮膚トラブルは無く経過しました。
I氏に対するケアのうえで、介護負担ともなっているのが、排尿量が多く尿もれしやすい・・という事があります。体位変換の角度によっては、尿もれが起こる頻度が高くなっていました。
今回、I氏に利用してみた1つの理由として、自動的に体圧分散ができるのであれば、背中にクッションを挟む等によって起こりうる尿漏れも減るのではないか?との思いもあったからです。取扱説明書には「使用者に対する体位交換をはじめとする個別介護が不要になるわけではない」と明記されていますが、I氏の場合、皮膚トラブルもなく、また、尿漏れも減少しました。
■感想
今回、「体圧ブンさん」を使用し、褥瘡がある方の場合は、治癒、軽減するまでの期間に利用する事で一定の効果が現れると感じました。
また、在宅介護では色々な問題を抱えている事が多く、「老々介護」をされていたり、介護を必要とする側の体格が大きいなど、介助者に負担となる要素が多い場合などは、本来の使用目的とは異なるかもしれませんが、体位変換の援助を行わなくても済んだり、オムツから尿が漏れる事を防ぐ事ができたり、結果として寝たまま着替えをさせる手間が減る事につながったり・・いろいろな効果が期待できる製品なのではないかと感じました。